イベントレポート - 2019.08.19

やきスタ実演ライブVol.11 精肉界のマエストロ。その眼差しには肉への愛が溢れていた!〜香川県丸亀市「ふじむら精肉店」焼き師・川上敬史さん〜

「やきとりスタジアム東京」にて、香川県丸亀市「ふじむら精肉店」の焼き師・川上敬史(よしふみ)さんの実演ライブが開催されました。
今回は、街歩きとおいしいものが大好きなライター・森田奈央がライブレポートをお届けします。
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有楽町駅より歩いてすぐのビルにある「やきとりスタジアム東京」。
実演ライブが行われる個室のカウンター席に座ると、川上さんが少し恥ずかしそうな笑顔で迎えてくれました。

 
川上さんは丸亀市出身。子どもの頃においしい焼肉と出会い、その日から夢は“焼肉屋さん”でした。
高校生のときにお母様のすすめでバイトを始めた先が「ふじむら精肉店」。
昭和44年(1969)に精肉店として創業し、現在は焼肉やすき焼きを看板メニューとする老舗レストランです。
「バイトでは調理から接客まで、怒られながら仕事を覚えました。
厳しかったですが、楽しかったですね」と、川上さん。
高校卒業後、別会社に就職するも3ヶ月でふじむら精肉店に舞い戻り、仕事に打ち込み続けること約20年。
現在は、のれん分けした「肉Deli 高松 ふじむら精肉店」にて、メニュー開発の指揮をとっています。
肉 Deli 高松 ふじむら精肉店は、お弁当テイクアウト専門店として人気。
丸亀名物「骨付鶏」の通販も同時に行い、全国各地からも注文が寄せられるほどです。

 
「ずっと精肉の世界にいるので、きれいな肉を見ると捌きたくなるんです」と、静かに語る言葉には、一本筋の通った熱い職人魂が感じられます。

さあ、今回の実演ライブの料理は以下のとおりです。

 
【焼き師特撰 丸亀「ふじむら精肉店」コース】
・讃岐前菜盛

・オリーブ牛カイノミのローストビーフのサラダ添え

・オリーブ牛もも肉のタルタル

・オリーブ牛カルビの煮込み

・メイン 丸亀名物 骨付鶏

・食事 親鳥茶漬け

・デザート 豆腐のフロマージュ(ベリーソースとおいり添え)
 
 
カウンター席にはウエルカムカードと花。グラスに食前酒の「うめ酒ソーダ」がシュワシュワと注がれ、気持ちが高ぶってきます。
まず、「讃岐前菜盛」は、丸亀市の郷土料理「しょうゆ豆」、丸亀市の隣の坂出市にある清水屋の「八十八名物ところてん」、ふじむら精肉店の人気料理「ビーフシチュー」の3品。
川上さんが料理を1品ずつ丁寧に説明してくれ、「香川のおいしいものを知ってもらいたい」というまっすぐな気持ちが伝わってきます。

 
それではと、煎ったそら豆をタレに漬けた「しょうゆ豆」を口の中に放り込むと、想像以上の歯ごたえ。香ばしい豆の甘みが広がります。
「八十八名物ところてん」は、江戸時代創業の茶屋で手作りされてきたもの。コリコリと食感よく、天草の磯の香りがほのかに漂います。
濃厚な味わいの「ビーフシチュー」は、肉が甘くてトロットロ。ほかのお客さんも「おいしいとしか言えないですね」と絶賛です。
ビーフシチューにも使われている「オリーブ牛」は、香川が栽培発祥地である“オリーブ”の絞り果実を飼料として育てられた黒毛和牛「讃岐牛」。
オレイン酸を豊富に含むオリーブを与えることで、肉の旨みがぐっとアップするそうです。
川上さんは実演ライブに向け、“A-5ランク金ラベル”に格付けされたオリーブ牛のなかでも上質のものを長年培った目利きにより厳選(肉を見て触るだけでわかるのだそう!)。
気になる肉料理店には国内外問わず足を運ぶといい、その研究の積み重ねをもとに、
「オリーブ牛の旨みを最大限に味わえる料理を用意しました」と、表情を引き締めます。

 
次の料理の「オリーブ牛カイノミのローストビーフのサラダ添え」のカイノミは、一頭の牛から僅かしか取れない希少な肉。驚くほどやわらかくて、脂があっさりしています。

 
低温で火を通した「オリーブ牛もも肉のタルタル」は、口あたりしっとり。
肉の味がよくわかるようにシンプルに味付けされ、噛みしめると旨みが滲み出てきて、幸せです。

 
「オリーブ牛カルビの煮込み」は口の中で肉がほろりと崩れ、舌の上に甘みを残しながら溶けていきます。脂っぽさがなく、箸が次々と進みます。
ふじむら精肉店では、ここ数年、話題となっている“熟成肉”の調理技法を以前から手がけていたといいます。

「肉をうまく熟成させるには、温度や湿度の管理が大切。その微妙な加減はやはり職人の勘が頼りですね」と、控えめに少しだけ胸を張る川上さん。

確かに、どの料理の肉も旨みがぎゅっと凝縮し、本当においしいです。

メインの「骨付鶏」は、丸亀生まれのご当地グルメ。

 
ふじむら精肉店では鶏もも肉をたっぷりの油で揚げ焼きし、多い時期にはなんと1日1200〜1500本も! ちょうどよく火を通せるようになるには1年以上の修行が必要だそうです。
焼き上がった肉のくぼみに油をジュワ〜〜〜ッと注ぐ川上さん。お客さんから、うおぉ〜っ! と声が上がると、顔に満面の笑みが広がります。

 
「骨のまわりがおいしいので、手づかみでかぶりつくのがいちばんです。キャベツは肉の旨みが溶け込んだ油につけながら食べてくださいね」

 
さっそくいただくと、皮がカリカリ、肉がむちむちジューシー! ニンニクが効いたパンチのある味付けで、もう無心で頬張って、噛みしめます。
丸亀名物「骨付鶏」には親鳥・若鳥の2種類があり、今回のものは若鳥。

 
食事の「茶漬け」には親鳥をほぐした肉が入っており、若鳥とはまた違ったぷりぷり食感で、深い味。鶏と鰹の出汁もすっきりと風味よく、さらさらとお腹におさまります。

 
丸亀の祝い事に欠かせない伝統菓子「おいり」が可愛くのったデザートでごちそうさま。
すかさず「今回の料理はふじむら精肉店に行けば、また食べられますか?」と川上さんに質問。

「最高の食材を揃え、手間暇をじっくりとかけて作った、実演ライブのためだけの特別料理です。
肉にはこのような食べ方もありますよという提案ができたのなら、嬉しいです」。

 
川上さんの言葉には、肉をおいしく食べて喜んでもらいたいという強い思いが込められ、そこにはお客さんへだけでなく、肉への愛情が満ち溢れていることに気づかされます。
実演ライブは、焼き師の方の料理に向き合う様を目の前で見て、会話を楽しみながら、その
料理はもちろん、人柄も味わえる貴重な時間なんですね。

 
サインパネルに「人生勉強」と記し、「もっと勉強して、もっといろいろなおいしい肉料理を作りたいんです」と、やさしい笑顔で真剣に話す川上さん。
人生をかけて取り組み、思いを遂げようとしている姿に、私にもそれだけ打ち込めるものはあるだろうかと自問自答してしまいました。
最後に川上さんのいちばん好きな食べものは何かと伺うと、「寝かすとやわらかくなる和牛ハラミの焼肉です」。

やっぱり焼肉なんですね! 川上さんは子どもの頃からブレない、まさに一本筋の通った焼き師でした。
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