イベントレポート - 2019.08.23

やきスタ実演LIVE VOL.13 愛媛県今治市「まる屋」徳永圭子さん、ライブレポート!

包容力たっぷりの今治まる屋の店主、徳永圭子さん
やきとり食文化の国際的な発信拠点「やきとりスタジアム東京」からお届けする、その名も〈やきスタ実演LIVE〉。国内有名焼き師によるフェイス・トゥ・フェイスのやきとりパフォーマンスは、早くも13回目を迎えました。
今回の実演やきとりフルコースを提供するのは、2018年秋に続いて2回目の登場となる「愛媛県今治市 まる屋」。場を仕切るのは店主の徳永圭子さんと長男の【タケル】さん。笑いの絶えないとても楽しく美味なる宴をレポートします。


暖簾をくぐれば、まる屋の味の世界が広がる。
「皮で始まり、ざんきで終わる」と地元では言われているほど、今治市民は皮が大好き。夫婦共働きが昔からあたりまえだったこの土地で、たとえばタオルの工場で働く奥様方を待ちながら、雨で仕事が早上がりになった旦那衆が晩ご飯までの短い時間をやり過ごす。ちゃぶ台の上にはパリッパリッのとり皮とビールが…。この絶妙のコンビが、昭和の今治、夕暮れ時の風物詩だったのかもしれないと想像力を掻き立てられます。


厚い鉄板でギューッ。皮のあの甘い香りをたっぷりと含んだ煙が客席を包んでいく。
そんな今治のとり皮には、盛んな造船業のおかげか、入手しやすかったであろう分厚い鉄の重しが欠かせないそう。厚みのある重しと鉄板で、とり皮をサンドイッチに。揚げ焼きに近い状態となったカリカリのとり皮を、あらためて店の備長炭の焼き台で炙って、余計な脂を落とす、それを今宵いただくのです。こんなにていねいな手順で作られるとり皮料理を、あなたは知っていますか?







鳥の脂のあまーい香りに続いて、パリッパリッの皮が!

炭のはぜる音に、期待は膨らむばかり
まずは突き出し「今治名物 いぎす豆腐」をいただいておりましたが、すっかり豆腐でじらされた脳内に、突然、鳥の脂のあまーい匂いが飛び込んできました。誰もが食欲をかき乱される、あの香りが空間を覆います。
今治市民はせっかちだという噂はもはや全国区かもしれませんが、「椅子に座ったかと思うと、とり皮が置いてない卓を見てとたんに機嫌が悪くなるお客様もいるほど」と笑顔で語る【タケル】さん。たしかに、この皮の味を知ってしまったら、待ちきれなくなるのは至極当然。


皮のパリパリと脂のクニュが交互に口の中で弾ける。箸が止まらず一気に完食。
「イメージしているのは北京ダック」と言わしめるほど【タケル】さんのこだわりが詰まったこの皮。本当にいくらでも食べられそうなほど軽い食感で、なんと私の隣席のお客様は「この皮を求めて東京から飛行機で7回も通ってしまいました」という。その気持ち、よくわかります! 今治やきとりの代表格ともいえるこの「皮」をポン酢で和えたひと皿と、特製の甘だれと一味唐辛子で食べるひと皿と、2種類を贅沢に味わいました。もっともっと食べたかった…。





フィレンツェっ子を虜にした、その皮とは?

終始笑顔で焼き続けてくれた【タケル】さん。
このとり皮、日本人を虜にするだけではありません。その絶景からいまや世界の「しまなみ」となったサイクリストの聖地のひとつ、しまなみ海道には、海外からの観光客がひっきりなし。その彼らがバスに乗って「まる屋」さん前に集合、人気のひと品一品に舌鼓を打ってご機嫌で帰っていくまでになったとか。
日本を軽々と越えた味、そんな「まる屋」自慢の皮ですが、イタリアのフィレンツェでこれを披露する機会があったときのこと。店主の圭子さんが「まぁ、グミやね」と笑いながら、思い出話をしてくれました。


「よく夫婦と間違われます」という長男【タケル】さん(左)と、【タケル】の母で店長の圭子さんの笑顔が「まる屋」の魅力のひとつ。
つまりフィレンツェっ子からした鳥の皮の食感についてなのですが、地元イタリアでは食べ物としてあまり重宝されていないのが、とり皮。そんなフィレンツェっ子たちにとって「まる屋」のとり皮のハードルは当然のことながら高かったようですが、一度口に入れたとたん、その味に驚いていたそう。それからお店の前に長蛇の列が続いたのは、想像に難くないですよね。「今度はロシアに行くんですが、うちの皮を食べた現地のみなさんの反応が、今から楽しみです」と圭子さんは自信たっぷりに話してくれました。





「ももにんにく焼き」は歯ごたえ最高。自家製のつくね串焼きも!

串に刺さずに供されるのが、今治やきとりのスタイル。
さて、コースも中盤。希少な地鶏の「媛っこ地鶏」を使った「ももにんにく焼き」は歯ごたえがすごい! この地鶏のもも肉の旨みと格闘しているあいだに口の中であのパリッとした食感が。皮がとてもすばらしいアクセントになっています。


地鶏のもも肉が焼き網の上でいまにも踊り出しそう。
これは今治名物である鉄の分厚い重しで肉を鉄板のサンドイッチにし、揚げ焼きに近い状態にしたあと、あらためて備長炭の上で炙る、そのていねいな手順のおかげ。手間をまったく惜しまない【タケル】さんの焼きに、脱帽です。


串焼きで「まる屋」の自家製つくねをいただけるのは、このイベントならでは。
瀬戸内の海山の幸「松木のたたきサラダ」と「桜井の地えび唐揚げ」に続いて出てきたのは「まる屋」自家製のつくね串焼き。今治のお店ではハンバーグかと思うような食べ応えのあるひと品ですが、「ここは銀座も近いですから上品に(笑)」ということで串焼きスタイルになっています。これは余計な味付けが一切感じられないシンプルさで勝負しているようで、とはいってもパサつきなどまったくなく、付け合わせの黄身にも負けない旨みでした。





「まる屋」のとり料理の〆といえば「ロシアンざんき」!

辛くない「ロシアンざんき」は熱々のフワフワで、おなかも大満足。
「皮で始まり、ざんきで終わる」。合い言葉のように昭和の今治ではこの言葉が飛び交っていたのでしょう。いよいよ、お待ちかねの「せんざんき」(唐揚げ)の登場です。が、その前に「せんざんき」とは何でしょう? 諸説あるようですが圭子さんに聞いたところ、彼女も地元の老舗「スター」さんの大将から聞いた話、と断りながら教えくれました。「「せん」はセンさんという人名、「ざん」は中国語で揚げるという意味の「炸」。「き」は…何だろうね(笑)」


圭子さんとタケルさんの笑いが止まらないトークに酒もすすむ
「せんざんき」は「せんざんき」。ということで「まる屋」のせんざんきには「ロシアン」が頭に付きます。実はこれこそが今宵限定の最高のおもてなしだったのです。ロシアン・ルーレットならぬ「ロシアンざんき」。なぜか懐かしのあみだくじを持ってカウンターの外を圭子さんが闊歩しています。そうして数分後、くじをもとにした番号の小旗が刺さったせんざんきが小皿にのって運ばれてきました。見た目はふつうの揚げたての唐揚げですが、ひと口ほおばったとたん、タバスコの強烈な刺激臭が! 見事にライターが当たりくじを引いたのでした…。辛い、おいしい、そして辛い、でもおいしいの繰り返し。思わず顔を上げると、そこには圭子さんと【タケル】さんの満面の笑みがありました。


とり料理の数々に興奮した気持ちを、鯛そうめんが鎮めてくれる。
「ロシアンざんき」のおいしい衝撃も冷めやらぬまま、そうしてコースは〆の「鯛そうめん」へ!
おなかも大満足。デザートの愛媛柑橘を使った銘菓「紅まどんなゼリー」まで、あっという間の90分でした。人を笑顔にするのが本当に大好きな徳永親子。おふたりの最高のパフォーマンスを見て、笑って、そして最高のやきとりを食べて幸せになりたい方は、ぜひ第3回目のリクエストを!


Text:Kaoru Hashiguchi
Photo:Jumpei Saito
  • このエントリーをはてなブックマークに追加