イベントレポート - 2018.07.17

6/3 やきスタ実演ライブVol.1 カリスマ焼き師・森田尊則

YAKITORI STADIUM TOKYO オープンイベント

大阪屈指のカリスマ焼き師が‘やきスタ’に登場

2018年6月3日にオープンした全や連プロデュースの「やきとりスタジアム東京(やきスタ)」。
その魅力の一つは、なんといっても一流の焼き師たちによる「実演LIVE」。
やきスタ内の特設カウンターを舞台に、国内外の焼き師たちが出演してその腕をふるいます。
焼き師との出会いや対話を通じて、奥深いやきとりの世界を味わって頂きたいという、やきスタの思いが込められたイベントです。

今回の記事は、記念すべき、やきスタのオープニングを飾った「実演LIVE」に参加した脚本家の栗山宗大さんからレポートを頂きました。

全や連な私 カリスマ焼き師との再会

脚本家をやっている栗山です。特に食をテーマとした執筆活動をしているわけではありませんが、全国やきとり連絡協議会(全や連)という、あくとコクの強すぎるやきとり屋さんたちとご縁をいただき、いつの間にか、やきとりの世界に深入りしております。さらには「やきとりスタジアム東京」という、前代未聞のお店づくりに巻き込まれることともなり、大変貴重でスリリングな経験をしています。全や連は、本気です。本気で、やきとり界の新たな歴史をつくりはじめています。やきとりご当地を代表する銘店店主、もしくは孤高の一流焼き師たちが(色々ありますが)手をとりあい、信頼関係を築き、様々な挑戦をしている姿には(ヒヤヒヤしますが)、いつも心を打たれています。

そして、「やきとりスタジアム東京」の目玉企画「実演LIVE」も、まさにその挑戦の一つ。果たして、どのような場になるのだろう。とても気になりまして、オープン日のやきスタに潜入し「実演LIVE」の様子を見て参りました。出演する焼き師は、森田尊則さん。ミシュランガイドビブグルマンに2年連続で掲載された大阪の銘店「炭火やき鳥・森田」の店主さんです。

話は遡りますが、森田さんとは、大阪のお店を取材した際に初めてお会いしました。「ミシュランにも掲載された有名店の、かなりストイックな焼き師」という噂を耳にはしましたが、実際には大変気さくなお人柄。ただ、無駄な物を一切削ぎ落とした静謐なお店の佇まいからは、森田さんのやきとりに対する並々ならぬ思いが伝わってきます。小1時間、森田さんのやきとりを味わいながら、そのお話を伺いました。

「小学生の時、ある日父が焼き鳥屋さんへ連れて行ってくれたんです。店内には煙がもくもくとしていて、とても活気に溢れていた。その雰囲気の全てに、なぜか全身が奮い立つような衝撃が走りました」。

子供の頃に、父親と訪れたとある焼鳥屋での強烈な体験。それが後の人生に、決定的な影響を与えたのでした。「焼鳥屋になる!」という夢を持った森田少年は、高校・大学時代から「やきとり修行」を重ね、30歳にして大阪に「炭火やきとり・森田」を開店。厳選した素材、それを生かす焼技で、やきとり通の間でも伝説となるお店に磨き上げていくのでした。「やきとりとは人生そのもの」。そう語りながらも、いわゆるギラギラした感じが一切しない、自然体なスタイルがとても印象的でした。

ちなみに、このつくねが、筆舌しがたいほどの絶品。挽肉がほろほろっとほどけながら、旨味とともに口内に広がるあの感覚は衝撃の初体験となりました。このつくねに出会うためならば、いつでも新幹線に飛び乗って大阪へ行こう。そう固く思ったほどでありますが、「さすがに大阪までは行けないよ」という声も聞こえます。そうです、そうなんです。そんな方(東京在住)のためのイベントが、ここやきスタの「実演LIVE」というわけです。

焼き師との出会いという贅沢

やきスタ店舗の奥側、ひっそりと提げられた暖簾をくぐった先が、特設カウンターとなっています。限定8席。洒落た設えのL字型カウンターが、実演LIVEの舞台。今後、どんな焼き師が登場して、どのようなやきとりドラマが繰り広げられるのか? 想像するだけで、なんだか興奮してきます。その記念すべき第1回目の出演者に相応しい焼き師は誰か? 全や連の喧々諤々の検討の結果、選出されたのが森田さんだったのです。「もともと、やきとりイベントや食フェスなどには参加しない信条なんです。ベストな提供ができる環境は、やはり自分の店しかないので…。でも今回は、全や連さんの挑戦に賛同して、お引受けをさせて頂きました。ただやっぱり、慣れない状況、すでにトラブルが起きてますけど(笑)」。焼き台の底で備長炭を転がしながら準備を進める一流焼き師は、その胸のうちを明かしてくれたのでした。

この日、実演LIVEで提供されたメニューは以下の通り。
【森田流 焼き師特選コース】
・前菜 ミニサラダ
・抱身
・ぼんじり
・焼き野菜
・背肝
・大根おろし
・焼チーズ
・捏ね
・葱間
※日本酒:爾今、山廃純米、一四代、獺祭、田酒
森田流ともいえる定番のコース。さらにはそれぞれの串にマリアージュする日本酒のラインナップは、「炭火やきとり・森田」ならではスタイルでした。



今、こうして思い出すだけでも、涎が溢れ出て来てしまうわけですが、私自身はどの串一本も賞味することが叶いませんでした。なぜ、そこに私の席が用意されていなかったのか…、無念と後悔の極みでありました。
※編集部註:そもそも栗山さんは映像撮影のために来店されております。
しかしながら、1串1串の美味しさにため息をこぼし、はたまた感動の声を上げては、森田さんと嬉しそうにお話しているお客さんたちの姿を見つめていると、こちらまで幸せな気分になってくるのでした。さらには素材について、焼き方について、一般の方にも丁寧に分かりやすく説いてくれる森田節に耳を傾けると、改めてやきとり世界の奥深さを発見するのであります。これぞまさに、やきスタならではの魅力。一流焼き師と出会える、贅沢な体験が、ここにはありました。(せめて、あの捏ねは食べたかったけど)。

子供たちが憧れる 夢の職業として

至福の時は一瞬にして過ぎ去りて…。実演LIVEを堪能して帰られる一人ひとりのお客さんに、森田さんは丁寧にお礼を伝えお土産を渡していました。「今度は大阪のお店に食べにいきます!」「いやいや、またここ(やきスタ)来るんでよろしくお願いします(笑)」。そんな微笑ましい光景が繰り返される中、森田さんに今回の手応えを伺ってみました。

−栗山 ひとまずはお疲れ様でした。みなさん大満足でよかったですね。
−森田 ありがとうございます。大きなプレッシャーと不利な条件でのスタートとなりましたが、終わってみて、僕自身とても新鮮な感覚を思い出しました。
−栗山 新鮮な感覚?
−森田 ええ。いつもと違う場所、はじめて立つカウンターでお客様と向き合っていたら、何か自分のお店をオープンした時の、初心のようなものが蘇ってきました。これは貴重な経験をさせて頂いたと思います。とはいえ、お客様に喜んで頂けて、ただただほっとしているだけなんですけど。
−栗山 また来るって、仰ってましたが?
−森田 そりゃもう来ますって、癖になりそうです。年内にもう一度かな(笑)。とにかく、やきスタのスタッフの方々にも支えて頂いて、感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。



少年時代に抱いた熱烈な夢をそのままに、やきとりの可能性を探求し続ける焼き師・森田尊則。彼は今、やきとり文化の未来にも思いを馳せているのでした。「子供たちが憧れる、夢の職業として焼き師という存在があっていいとも思います。やきとり文化や業界の発展のためにも、そうなっていくことが必要と感じています。だからこそ僕も、自分なりにやれることに挑戦していきたい」。先日の大阪でのインタビューの最後に、森田さんはそのように語ってくれたのでした。
たしかに、そうだなと、私も共感をしました。そんな未来が、あっていいかもしれない。
しかしそのためには、やきとりの焼き師という生き方に関心が寄せられ、もっともっとリスペクトされていく機運が起こらなければ。ここ、やきとりスタジアム東京が、そのための舞台の一つになっていくことを願って、見守っていきたいなと思ったのでした。

WORD by MUNEHIRO KURIYAMA
PHOTO by YUTAKA YASUDA
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